作品図版
国宝《平治物語絵巻 六波羅行幸巻》鎌倉時代・13世紀 紙本着色 42.2×952.9cm
東京国立博物館

国宝《平治物語絵巻 六波羅行幸巻(ろくはらぎょうこうのまき)》鎌倉時代・13世紀

1.作品解説

 「平治物語」を絵巻にしたものです。長い物語で、もとはおそらく10数巻のセットだったと思われます。 絵巻は横に長い画面をくるくると軸に巻いてあり、それを広げて楽しむものです。この一巻だけでも、全て広げると9メートル以上にもなります。絵巻は、物語の文章部分である詞書(ことばがき)とその内容を表した絵の部分で構成されています。絵巻では縦書きの文章と同じく、右から左に物語が進んでいきます。

 人物の身体の動き、生き生きとした表情、甲冑などの細部の描写と 、みどころは多くあります。また、シンプルな背景に、たくさんの人びとがまとまりよく描かれている群像表現も特徴的です。後半の第4段では、ひとりの人物(藤原信頼)が同じ背景に3回登場します(白い衣の人物に、幽閉していた天皇脱出の報告を受けそれを自分の目で確かめて地団駄を踏んで悔しがる)。これにより、時間の流れにそった物語の成り行きがビジュアルで表現されています。漫画でも、コマが変われば主人公は何度も登場しますが、そのコマ割りを外したようなこの表現を、異時同図法と呼びます。

○解説リンク

2.キーワード

キーワード:論理性(小5・6)
「どうして同じ人が何度も出てくるの?」

○キーワードにつなげるヒント

 この絵巻は、鎌倉時代におこった平治の乱の顛末を記した「平治物語」を題材としていますが、物語を説明してしまう前に、何が起こっているのか推測しながら鑑賞してみます。人物にセリフをつけて、出来事を想像してみるのもよいでしょう。子どもたちの観察・推測を補いながら、「平治物語」のおおまかなストーリーを把握します。 小学校高学年の鑑賞には、詳細な歴史的背景は不要ですが、どの人物が誰に閉じ込められて、逃げようとしているのか、という程度のことは確認しておくと、表現を読み取りやすくなります。

 絵画の形態に起因する独特な鑑賞方法についても、実際に体験してみるのは重要です。それが内容の表現とつながっているからです。簡単なレプリカでいいので、一場面ずつひらいては巻き取って鑑賞することをやってみてください。鑑賞者の肩幅程度にひろがっている一場面が、いわば漫画でいう1コマにあたり、場面が変われば主人公が何度でも登場する理由が分かるでしょう。美術館や博物館で、何メートルもひろげた状態で鑑賞するから、同じ人物が複数回出現するように見えるわけで、昔の人がするように個人的に鑑賞していれば、この異時同図法の表現は理解しやすいでしょう。e国宝のウェブサイトでは、場面ごとに静止画として表示することもできますし、画像を自動で横スクロールさせながら見ることもできるので、全体の流れを把握するのに適しています。

 物語の内容を把握し、絵巻特有の表現を体験した後は、各場面をこまかく観察し、物語を表わすための絵師の工夫を探ってみましょう。人物の配置や顔の向き、霞や余白による場面転換など、物語を魅力的に伝え、鑑賞者の視線を誘導するさまざまな工夫がこらされているのが分かります。


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