作品図版
古賀春江(1895-1933)《海》1929年 油彩、キャンバス 130×162.5 cm
東京国立近代美術館

古賀春江《海》1929年

1.作品解説

 作品のモチーフは、よく見ると対になっているようです。空を指差すモダンガールと左上の工場は、プロポーションが似ています。飛行船と潜水艦は、空と海の乗り物としての対。鳥と魚は、空と海の生物としての対。工場と潜水艦の中身が描かれていたり、水平線がずれていたりと謎の多い作品です。

 最近の研究で、ここに描かれたモチーフは、当時の科学雑誌や絵葉書の写真図版をもとにしていることがわかりました。飛行船は、当時日本に寄港して話題になったツェッペリン伯号です。古賀春江(男性です)は、関東大震災後に花開いた、昭和初期のモダン都市のイメージを、自由に組み合わせてみたかったのかもしれません。

○解説リンク

2.キーワード

キーワード:論理性(小5・6)
「海が切れている!?」

○キーワードにつなげるヒント

 さまざまなモチーフが寄せ集められていることで謎の多いこの作品は、画面に描かれたものをヒントに推理していくのに向いています。まずは描かれたたくさんのモチーフや疑問に思った部分をひとつずつ確認しましょう。その後、部分を組み合わせると全体でどのようなメッセージをもつ絵なのか考え、話し合ってみましょう。

○作品背景

 関東大震災からの建て直しが進んだ昭和の初期には、地下鉄が開通し、デパートができるなど、日本の人々の生活も大きく変化しました。洋装も広まり、最先端の洋服を着た女性は「モガ(モダンガール)」と呼ばれました。《海》の右側にも、絵葉書をもとに描かれた、いかにもモダンな女性がいます。

○こどもの声

「海が切れて、絵が分かれている!分かれているところは、時空が違う」(小6)

「女の人は、魚にテレパシーを送っている」(小6)

「題をつけるとしたら、《空想と現実の世界》」(小6)

・解説ボランティアのギャラリートーク感想(対象:小5)

 見たとたん「あ、アートカードの絵だ。」実際の絵はアートカードの何十倍も大きいねえ、と絵を見ていると、「潜水艦だ、縦割りで中がみえる。」「女の人が立ってる。」「バレーシューズ履いてる」「石段につま先立ってる」「女の人の後ろの海が下がってる」「貼付けてあるみたい」…その他には?と聞くと、「カモメがいる」「飛行船」飛行船見た事あるの?「うん、良く飛んでる」「うんうん」「向こうに太陽が沈もうとしている。」「太陽だ」「太陽じゃないと思う」「浮きじゃない?」「影が太陽の形じゃないから」他にもあるかな?「工場」「工場が海の中に入っている」「海の水を濾過しているんじゃない?」海の中…「魚がいる」「潜水艦がある」「これも貼付けてあるみたい」…「女の人が大きすぎる」「遠近法だよ」女の人は何をしているのかな?「号令をかけている」「飛び込もうとしている」「高村光太郎《手》と同じ手の形をしている」女の人は元気なんだ。これは元気な絵なのかな?「うん」「うん」…「人間的には、いい絵。」え、人間的には?じゃあ、魚的には?「魚的には、いい絵じゃない。」「うん」「魚的にもいい絵。だって工場で海の水を濾過しているから」そっか〜!

 と、とりとめない会話ですが、みんなで頑張って解題しました。最後に「貼付けてあるみたい」と何度も発言した子供がいたので、この絵は、実際に貼付けてはいないけど、確かにいろいろな場面をもってきてくっ付けて描いた絵です、と話しました。

・美術館へのお手紙より(小6)

 私は古賀春江さんの作品を見て、とても不思議に思いました。なぜ女の人がうでを上にあげてつまさき立ちにして立っているのか、なぜ潜水艦とサンゴが同じくらいの大きさなのか、なぜ1つ1つの絵をはったような絵なのか不思議でしたが、後からスタッフさんから1つ1つの絵を重ねたということを聞き、こういうかき方もありだなと思いました。

・ワークシートより(中3)

その作品の最初(事前授業)の印象:
色々なものがごちゃまぜで不思議な雰囲気。変な感じ。色合いが好き。
クエスチョン:
1つの絵の中にこんなにたくさんのものをつめこんだのは何か伝えたいものがあったのかな、と思った。
トークを聞いて最初の印象と変わったこと:
レトロな感じがすき。その時代の新しい物や雰囲気が表してるのかなと思った。「自然の物」「人工のもの」をいっしょにつめこむという発想がおもしろいと思った。


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