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作品図版
和田三造《南風》1907年
東京国立近代美術館
作品図版
萬鉄五郎(1885-1927)《裸体美人》1912年
東京国立近代美術館

和田三造《南風》実践例2
萬鉄五郎《裸体美人》との比較鑑賞

実施日:
2014年5月15日
対象:
宮城県公立中学校3年生(12人)
修学旅行のグループ活動として来館
内容:
ギャラリートーク
ファシリテーター:学芸員(東京国立近代美術館 教育普及担当者)
ねらい:
表現の比較を通して、絵画表現の幅の広さに気づく
ポイント:
①カラーパレットを使っての色彩の比較でよく観察する
②色彩とともに、タッチや主題の表し方の違いなどにも気づく

◇実施内容

●導入

隣接する二作品を黙ってじっくり見比べる、各自作品に近づいたり、距離をとったりしながら鑑賞

●対話

F:ファシリテーター  C:生徒

F「この絵の同じ所・違う所はどこでしょう?」

C「山と海の違い」、「格好(上半身裸・下半身に布を巻く)が同じ」

C「(描かれた場所が)普段人がいるような場所じゃない(のが同じ)。格好も変わっている、普段こんな格好はしない」

F「どちらも非日常的な情景ということかな。」

F「では違う所はどこかな?」

C「色使い、筆使いが違う…」

F「そうだね。右の絵はタッチが細かいけれど、左の絵はとっても大きいね!」

(近づいて熱心に見る)

●活動

2班(二つの絵をそれぞれ担当) に分かれて、それぞれの絵にどのような色が使われているか、多数の色つきマグネットの中から探してパレット(マグネットボード)に貼る

左:裸体美人
作品図版
生徒の選んだ色
パレット
右:南風
作品図版

F「パレットを見てどう思う?どんな色が使われていたかな?」

C「左(裸体美人)は濃い。右(南風)は微妙な色合い」

F「濃い、あるいは微妙な色から、どんなことを感じるかな?」

C:《裸体美人》について「力強い」「存在感がある」「作者が個性的…」
《南風》について「やわらかい。でも濃い色も使われているからやわらかすぎるわけではない」
「色の統一感がある。濃い色が使われたら、それがだんだん薄くなっていく」

F「そうだね、《南風》は同じようなタイプの色合いだね。グラデーションのような色が集まっている。」

●解説

F「左の絵は1912年に描かれ、右の絵は1907年に描かれました。
実は二人の作家の先生は同じで、こんな絵を描いた人です」

資料を見せる:黒田清輝(1866-1924)《野辺》1907年 ポーラ美術館

C「写真みたい!」

F「これら3作品はみんな油絵だけど、日本で油絵が描き始められたのは明治時代で、これらはちょうどその頃の作品になります。左右の絵(《裸体美人》と《南風》)で、どっちが先生受けすると思う?」

C:全員《南風》を指さす

F「その通りです。右の絵(《南風》)は文部省が主催する展覧会(文展)で、トップ賞を取りました。一方左の絵は(《裸体美人》)、大学の卒業制作なんだけど、卒業制作展の成績は下から数えた方が早い順位でした。他の作品が展覧会に飾られる中で、この作品は廊下の壁にかけられてしまった、という話も残っています」

C「でも、(《裸体美人》は)個性がすごい」

F「そうだね、さっきも言ってくれたように、とっても個性がありますね。それが評価されて、この作品は、現在は重要文化財に指定されています。」


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