作品図版
平田郷陽(1903-1981)《桜梅の少将》1936年 桐、毛、ガラス、木彫、着せつけ、胡粉仕上げ h65cm
東京国立近代美術館

平田郷陽《桜梅の少将》1936年

1.作品解説

 烏帽子に桜の枝を挿した貴公子像。片足をぐっと前に踏み出して、優美な踊りが始まりました。モデルは平維盛、後白河法皇50 歳の祝賀で見せた舞姿です。『建礼門院右京大夫集』に「今昔見る中にためしもなき」と称えられた美貌を、作者はなんと端正に、そして精緻に伝えたことでしょう。木彫に胡粉をごく薄く施した肌はどこまでもなめらかです。また眉や耳たぶの繊細さ、口元には歯袖口を押えた指には爪までが彫り出され、ぞくっとするような存在感をもたらしました。千鳥の袍(ほう)は演目である「青海波」の決まりの衣裳。大きな袖が軽やかに揺れ、次の振りを予感させます。

○解説リンク

2.キーワード

キーワード:歴史と信仰(中2・3)
「日記でも評判の美青年」

○キーワードにつなげるヒント

 光源氏にもたとえられた維盛の青海波は、『玉葉』などの日記で詳細に記されました。それから10年と経たないうちに、27歳で維盛が自ら命を絶つことになるとは誰が予想したでしょう。細部の表現を観察した後にこうした歴史的背景を伝えれば、作者が目指した一瞬の、けれど凄まじいほどの迫力に満ちた美の姿がひときわ印象深く感じられそうです。

 また、襲装束(かさねしょうぞく)には、日本的な模様の魅力があふれています。たとえば袴の模様。5弁の花でもありますが、公家階級の装束等に用いられた有職(ゆうそく)模様では「窠(か)」と呼びます。窠とは瓜の輪切りのこと。優雅な遊び心を感じさせる名称です。

○作品の背景

 作者が若い時に修業した「生き人形」(人間そっくりに作る等身大の人形)のわざが細部にまで息づいています。作者にとってこの緻密さは、模写ではなく「情熱と感情の表れ」という信念そのものでした。

○こどもの声

「すげぇ!」(小4)

「『さあ、これを見よ!』という感じ。」「夜見たら絶対やばい。」(中1)

「なんか見ちゃう。じーっと見ちゃう。」(中2)

「着物の模様もすごく細かい。」「(袍が千鳥に波文と知り)だったら右袖の白に青い模様は雲かなと思った。」(大学生)


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