作品図版
十三代今泉今右衛門(1926-2001)《色鍋島薄墨石竹文鉢》1982年 磁土、轆轤成形、下絵付、上絵付 h12.4cm D45cm
東京国立近代美術館

十三代今泉今右衛門《色鍋島薄墨石竹文鉢》1982年

1.作品解説

 セキチクの葉と茎を筆の勢いが感じられる藍色の線で、花は赤い輪郭線で囲んだ白い面で表しました。中心は小さなつぼみですが、外に広がるほどほころび、縁の辺りでは今を盛りと咲き誇っています。まるでロクロの回転に乗せて鉢を成形したときの勢いが、模様である植物の生長を促しているようです。藍色の線と地の墨色は釉(うわぐすり)の下に、ただ赤い縁取りだけを釉の上に描いたため、満開となった花の印象がいっそう際立ちました。

 「色鍋島」は江戸時代に肥前鍋島家の御用窯で焼かれた色絵磁器。青、赤、黄、緑が基調色でしたが、十三代今右衛門はそこに現代的な感覚を取り入れるために「薄墨」技法を完成させました。

○解説リンク

2.キーワード

キーワード:造形要素(小5・6)
「回転しながら、じょじょに開いて」

○キーワードにつなげるヒント

 平面とは異なる鉢の形に表わされた模様であるということが、この作品を鑑賞するうえでのポイントとなります。つぼみから少しずつ開いていく様子、向きや大きさ、数などを観察しながら、それが器のどの辺りにあたるのかにも着目しましょう。高学年になると、ロクロ成形の映像を見たり中には体験したことがある生徒も増えます。回転の秘密を考えるヒントとして、鉢の成形について少し触れてもいいかもしれません。

 一方、中学年までは、もっと感覚的に捉えるだけでも十分です。中心部分はガクまで描いてあるのに、縁近くではもう花だけです。そんな自然界の描写とは異なる模様としての植物の表わし方を楽しんでみましょう。

○作品の背景

 本作には「薄墨」と「墨はじき」という技法が使われています。薄墨は地の部分。素焼きした鉢に薄墨色に発色する絵の具をスプレーで吹いて彩色すると、均一に塗り付けた時とは異なる微妙な濃淡が生じます。そのため、元々の器の形に加え、明暗によっても奥行感をもたらすことができるのです。一方、墨はじきは白い花びらに用いました。薄墨の前に絵の具を吸わない墨で模様を描くと、焼成後に墨が消えて、みずみずしい磁器の肌が現れます。どちらにも「墨」の文字が使われているので紛らわしいですが、薄墨が彩色に用いられるのに対し、墨はじきはマスキングの効果で模様のかたちと同時に質感を表わす手段といえます。

○こどもの声

「まだつぼみもあって、この辺(縁の近く)はいっぱい咲いている。」(小2)

「こっち(鉢の外側)の花は灰色。」「背景の灰色のところがもやもやしている。」(小4)

「風車みたいに回っている感じ。」(小5)


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