作品図版
寺井直次(1912-1998)《極光》1956年 漆、卵殻、平文 141×122cm
東京国立近代美術館

寺井直次《極光》1956年

1.作品解説

 漆の原料は褐色の樹液です。顔料で調整することでほとんどの色を表わせますが、長年、純白だけは出せずにいました。そこで考案されたのが「卵殻(らんかく)」という、鶉や鶏の卵の殻を漆で貼り付ける技法です。そして卵殻は白を表わすだけでなく、漆面の艶とは異なるマットな質感とわずかな凹凸をももたらします。本作では3 匹の狐の姿にこの卵殻技法が用いられました。カケラの大きさや密度を変えたことで陰影と遠近感が生じ、まるで3 匹の狐が闇から踊り出し、また闇の奥へと消えていくようです。

 一方、狐の眼と鼻は「平文(ひょうもん)」といい、金の薄板を漆で塗り込めてからその部分を研ぎ出します。輪郭のあいまいな像の中で眼光が鋭くきらめき、神秘的な雰囲気が高まります。

○解説リンク

2.キーワード

キーワード:プロセス(小3・4)
「白い点点の正体は?」

○キーワードにつなげるヒント

 点描のような狐の表現方法に、子どもたちはすぐに関心を持ちます。そこでまずはその描き方を予想してみましょう。白のはっきりしているところやおぼろなところの表現に求められる工夫や、それによってどのような印象が生まれたかを話し合いましょう。卵殻の情報はぜひその後に。身近な材料と時間のかかる工程が、子どもたちの眼を再度作品に惹きつけます。クローズアップ画像も併用すれば、質感や立体感への言及も期待できそうです。

○作品の背景

 フィンランドではキツネは不思議な力を持ち、夜、獲物を求めて駆け回るキツネの尻尾が、高い岩山や雪原に触れて火花が飛び散り、それがオーロラとなるのだという言い伝えがあります。そのためフィンランド語のオーロラは「Revontulet」、狐火を意味するのだそうです。日本の伝統のわざとフィンランドの昔話が結びついたと考えると、作品への興味がますます深まりそうです。

○こどもの声

「細かいところまでうまく出来ていて、目がぎらんとなっている。」「かっこいい。」(小4)

「黒・白・金・赤の使い方がうまい。」(小6)

「神秘的で明暗があり、美しかった。」「材料が漆、卵のからなので白黒でもはっきりしている。」(中1)

「3 匹のきつねがおどるようにしていて、とてもきれい。」「どんどん暗くなるところがいい。」(中2)

「卵のからで作るという発想が好き。きつねもかわいくて暗闇のバランスと合っている。」(中3)


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